Page 1529 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 通常モードに戻る ┃ INDEX ┃ ≪前へ │ 次へ≫ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ▼ドビンの生きる街:犬に教えられる自由な人生 流水 04/10/2(土) 14:44 ─────────────────────────────────────── ■題名 : ドビンの生きる街:犬に教えられる自由な人生 ■名前 : 流水 ■日付 : 04/10/2(土) 14:44 -------------------------------------------------------------------------
昨日、NHK広島制作の「案内犬ドビンの尾道日記」という番組が放映された。 地方局制作の番組なので、全国で放映されたかどうか分からないが、最近ではまれに見る 心温まる内容だった。 千光寺へ上るケーブルの下にある寺の石段にごろっと寝転がっている犬がいる。 ドビンである。おそらく柴犬の雑種であろう。丸々と肥えている。 観光客がかたわらを通っても逃げようともしない。そんなことは全く意に介せず寝たいときには寝る、起きたいときには起きる。悠々としており、まさに大人(たいじん)の風格否、犬だから犬格がある。 このドビンにも悲しい物語がある。 よく知られているように、尾道は坂の町である。この坂道を毎日昇り降りするのは、老人には辛い。 ドビンの飼い主も、坂道の辛さに耐えかねて、家を捨てた。次の飼い主も、同じ悩みのため、家を捨てた。 こうして、ドビンは野良犬になぅてしまったのである。 しかし、ドビンは、渋谷の忠犬ハチ公にも匹敵する飼い主思いの犬だった。家を出て行った飼い主の帰りを待つため、毎日毎日尾道駅でじっとたち続けた。(正確に言うと座り続けた) この姿が多くの市民の同情を誘ったのである。 現在、ドビンは毎日寺の石段あたりでごろっと寝そべっているが、気が向くと観光客に尾道を案内する。市の観光パンフレットにも、「案内犬ドビン」として紹介されている。そのため、若い女性を中心とした観光客がよくドビンの周りに集まる。 しかし、ドビンは気まぐれで、気に入った観光客しか案内しない。しかも、ドビンが案内する道は、歩きやすい道ばかりではない。ドビンについていくのは、なかなか大変ではある。 このドビンに魅せられた市民たちは、「ドビンの会」をつくり、定期的に会合を開いている。 写真館を経営している人は、ドビンの写真を撮り続けている。御茶屋(今で言う喫茶店)を経営している人は、ドビンを見ていると、人生とは何かを教えられるという。 彼らの店には、ドビンはほとんど毎日訪れる。何をするでもなく、店の前にごろっと寝そべる。 その寝姿がなんとも言えずよい。東京で劇場の照明係をしていて、尾道にユーターンした人は、とにかくドビンの寝姿に魅せられてる。「とにかくあの姿を見ていると、癒されるんですよ」と語る。 ドビンは夕方になると、坂道を降りて尾道の街を歩く。商店街にはドビンがくるのを待ち構えている人々がいる。それぞれの店で、少しづつ食べ物を用意しているのである。ドビンはゆっくり一軒一軒回って歩く。丸々と肥えるわけでである。 そして、最後は、ある社長の家までいくと、そこにはドビンのねぐらが用意されている。 それぞれの人がそれぞれのやり方でドビンにかかわり、それぞれの人がそれぞれの思いをドビンから受け取っている。 画面を通してドビンと人々の交流を見ていると、じわっと心の中に暖かさが湧き出してくる感じがした。 わたしは何度も尾道を訪づれたことがあるが、今度はドビンに会うために尾道へ出かけようと心に決めた作品だった。 |