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 ▼吉野弘「夕焼け」の紛い物  無名士改め意地悪爺さん 04/3/26(金) 23:51

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 ■題名 : 吉野弘「夕焼け」の紛い物
 ■名前 : 無名士改め意地悪爺さん
 ■日付 : 04/3/26(金) 23:51
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    吉野弘の有名な「夕焼け」という詩を皆様ご存じのはず。それに少しく関連。
 通勤電車の中での挿話。今日の帰途、途中の乗換駅で運良く座ることができた。直後にその駅からお年寄りが乗ってこられ、たまたま余の前に立たれた。十歳は年上とお見うけした。普段から自らに課している方針にしたがい、席を譲る。もちろん、ご老人は、次の駅までだからと辞退され、余はそれでもどうぞと、須臾の間譲り合う。結局、にこやかにご老人は余の譲りを受けてくださり、下車の折に、もちろん「ありがとう」という言葉と会釈をしてくださった。
 これだけならまあ、お節介な初老男の意地っぱりgrandstand playなのだが、これもまた自らに課し(?)ている方針どおり、席を譲って立ち上がるときに「若いのはゆずりませんからな」と笑いにまぶして一言付け加える。もちろん、さっきから余の右隣に体育会系体型の二十歳そこそこの男が座っていたのを視野の片隅においての発言。するとしばらくして、ご老人の左側にかけていた女性が立ち上がり、余に席をゆずろうとしてくれたのである(ほんの少し遅かったね。余より先に実行していたら気持ちのよい一幕を見せてもらえたのに)。余は笑いに紛らわせて固持する。女性は格好が付かなくなったのだろう、余の横に立っていた中年女性に譲って、他の乗客の中に紛れてしまった。ちょっと気の毒だった。
 その女性、あるいは老人に席を譲るきっかけをとらえられなかったのかもしれず、また、当節のニッポン人の中に居ては、なかなか素直に行動しづらかったのかもしれない。
 余が「嫌み」を伝えたかったのはその女性ではなく――もっと年かさだと思っていたのだ――体育会系のガキの方だったのですよ。もし、このメールを見ておられたら余の真意をくみ取ってください。
 ともあれ、普段から苦々しく思っているニッポンのガキどもに、こんな形であれ、中年・初老の心意気を明瞭に示すことが、いつかは昔の日本を取り戻すことにつながりはしないかと思いながら、今日も「意地悪じいさん」を演じているのである。

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