Page 368 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 通常モードに戻る ┃ INDEX ┃ ≪前へ │ 次へ≫ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ▼世界の読み方;新リベラル帝国主義 流水 04/4/22(木) 9:22 ┗Re(1):世界の読み方;新リベラル帝国主義 もんど 04/4/22(木) 23:47 ┗Re(2):世界の読み方;新リベラル帝国主義 流水 04/4/23(金) 7:53 ┣Re(3):世界の読み方;新リベラル帝国主義 しゃねる 04/4/23(金) 9:07 ┣Re(3):世界の読み方;新リベラル帝国主義 ぬっら・えぬっら 04/4/24(土) 1:37 ┃ ┗Re(4):世界の読み方;新リベラル帝国主義 流水 04/4/24(土) 7:30 ┗Re(3):世界の読み方;新リベラル帝国主義 もんど 04/4/24(土) 12:20 ─────────────────────────────────────── ■題名 : 世界の読み方;新リベラル帝国主義 ■名前 : 流水 ■日付 : 04/4/22(木) 9:22 -------------------------------------------------------------------------
先日、イギリスのブレア首相が、ブッシュ大統領と会談した。イラク統治の現状を分析、対応策を協議するためであろう。彼の国際戦略は、英国の外交官【ロバート・クーパー】の理論に大きく依拠している。今回は、【新リベラル帝国主義】と呼ばれる彼の理論の概要を紹介してみる。ネオコン派と共通するところの多い、彼の理論を検討してみれば、小泉政権の政策がどこに軸足を置いているかがはっきり見える。(※小泉首相が自覚しているかどうかは別問題) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 【現代世界国家の分類】 1、※【プレモダン地域】 旧植民地国家の中で、国家形成に失敗し、「万民の万民に対するホッブス的戦争が行われている」地域⇒(例)ソマリア・リベリア・アフガンニスタンなど 2、※西欧・日本【ポスト・モダン国家】 安全第一に征服構想を考えない、ポスト帝国主義・ポストモダン世界 3、【モダン国家】 国家として、マキュアベリ的原理と国家事由に従う伝統的国家⇒(インド・パキスタン・中国・アメリカ) この中で、2の特徴は何か。(西欧諸国の考察が主) 1、国内事項への相互介入と相互監視(EUの形成過程)・紛争解決のための武力行使の拒否と行動を自己規制⇒法典化・国境の非重要性の進行 2、国民国家の崩壊を含まない ●経済・立法・防衛⇒国際的枠組み●領土・境界の重要性が減少 ●国民的一体感(アイデンテイテイ)と民主的諸機構⇒国家の役割 ↓ ■ポストモダン諸国の間では、伝統的な意味での安全への脅威はない。 【モダン国家】 戦争が政治の手段であるとするマキュアベリ的世界に住む⇒伝統的【国民国家】 では、上記の関係はどうなるのか。 ●【プレモダン世界】⇒【ポストモダン世界】←【モダン世界】 ※脅威 ※脅威 この対応をどうするか。 ■二重基準の対応を提唱 1.ポストモダン世界への対応⇒相互の法と開かれた共同安全保障で行う 2.プレモダン世界(ジャングル)⇒ジャングルの法を適用する ※ジャングルをカオスが支配⇒「植民地化」で対応する。これに【人道的干渉】を加えればベスト。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 彼の考え方は、きわめて、わかりやすく明快である。イギリスがアメリカを積極的に支援した理由もある程度納得できる。 つまり、イラクは【プレモダン国家】であり、基本的にはジャングルの掟が支配している地域として認識している。これに対応する政策として、【植民地化】で行うというわけである。 同時に、ジャングルの住人には、先進国のルールは適用しないというわけであろう。これが、ファルージャなどでの米軍の残虐行為を正当化する理論的根拠になっているのであろう。 問題は、彼の分類による「モダン国家」への対応が明確でないところであろう。これは、覇権国家アメリカに対する影響力を行使したいというブレア首相の現実的戦略が優先すると言うことなのかもしれないが、今回のブレアの苦境を見れば、この理論的弱点が致命傷になっているのかも知れない。 同時に、もつとも懸念されるのは、英国も米国も「プレモダン世界」を民主国家へ教化していく努力を諦めたのではないかという点である。【ジャングルの掟】の適用とは、リアルかも知れないが、少々違和感がある表現である。この【違和感】が、さらなる混乱の要因になるのではないか、という懸念は払拭できない。事実、イラクの現状やアフガンの現状は、さらなる混乱の予兆を示していると思える。 問題は、ロバート・クーパーのようなアングロ・サクソン流の考え方の中に、【モダン国家=国民国家】やそれを支えるシステムが、プレモダン国家より進んでいるというアプリオリな前提があることである。 この前提を信じて疑わないから、今回のイラク戦争のように、【民主主義を移植する】という発想が生まれる。 だから、その国の固有の文化・固有の統治システムなどを自分たちの価値に照らして【無価値なもの】として破壊するということにつながる。 英国は、過去の植民地支配のノウハウがあるので、そのあたりは米国とはかなり違うが、米国は単純で粗暴なやり方でその国の文化などを破壊する。従わないものは武力で鎮圧する。これが、さらなる反米意識を増幅する。 ポストモダン国家の考え方は、明確に違う。その国の文化やシステムを尊重しながら、その国の意志でその国が変容するのを待ち、国家間の利害調節は粘り強い話し合いで解決するというスタンスをとっている。 一言でいえば、【多国間主義】をスタンスにしている。 クーパーの分類によれば、日本は【ポストモダン国家】に入っているが、小泉政権は、【モダン国家】に衣替えをはかっている。 21世紀の世界を考えるとき、モダン国家を根底においた【新リベラル帝国主義】的国家を目指すのか、【ポストモダン国家的多国間主義】を貫くのか、現在の日本はまさに21世紀日本の針路を決める国の岐路にたっていると思う。 イラク戦争は、単なる国際貢献とかというものでなく、上記の世界観の表現であると考えなければならない。 |
一体このような論理を提供する人間が、本当にその論理を信じているか、それともある種の勢力に都合の良い詭弁を弄しているかというと、私は後者の方であると思います。 イスラエル・アメリカの軍事産業は「文明の衝突」と言うプロパガンダで、冷戦体制の地域紛争が(したがって軍需も)必ず存在する構図を再現しようという意図があるようです。 それで、あえてそれほど脅威ではないが周辺諸国を不安にさせるには十分な国や勢力を相手に「テロとの戦い」と称し、圧力を加えているのです。 ブッシュの「悪の数軸」発言がこうした意図のものでなされたのは言うまでもないでしょう。 たとえば、対日本政策としてはアメリカは北朝鮮を刺激しておいて日本に武器を買わせたり米兵の人手不足を補わせたりというわけです。 イラクで行っていることもこの延長でしょう。 イラクの国民感情を逆なでしておけば、彼らは排他的になります。 米兵の人手不足が問題ですが、あわよくば徴兵制を復活させるか、国連軍など他の国からの兵隊で補わせるか、もしくはその両方をすればすむと思っているのかもしれません。 ただ、しばらく前からアメリカの対外政策が目に見えて楽天的・・・というよりは、まるで酔っ払いの無謀運転のようになってきています。 大量殺戮兵器、特に核の最大保有国が次に何をしでかすのか見当もつかないというのは恐ろしい話です。 |
米国のマッチポンプは、今に始まったことでありません。以前にも書いたことが ありますが、米国にとって戦争は【公共事業】で、何年に一度は戦争をしなければ、経済が持たない構造になっているのでしょう。 はっきりした数字は失念しましたが、軍需産業関連の企業が米国国内に400社以上あり、それらの企業からの献金が各州選出の議員にばら撒かれ、戦争になかなか反対しにくい構造になっているといわれています。 もう一つは、ユダヤロビーの存在でしょう。在米ユダヤ人の人口そのものは、それほど多くはないけれど、投票行動は非常に組織力があり、資金力は群を抜いている。 ネオコン派のリチャード・バールやウオルフウイッツなどが親イスラエルであることは、よく知られています。彼らが、イスラエルの生存環境を整備するために、戦争理論を構築したのは、よく知られていることです。 ただ、英国の場合は、少々事情が違うと思います。ジャングルの掟という言葉に、アングロサクソン流のものの見方が象徴されていると思います。 会田雄次の【アーロン収容所】の中で、象徴的な逸話が書かれています。 彼は、英軍の捕虜になるのですが、英語が理解できるので、英国人将校の家庭の雑用係をさせられたそうです。そのとき、将校の奥さんは、ほとんど裸で彼に自分の下着などを平然と手渡したそうです。「恥ずかしさを知らないのか」と思っていたら、将校クラブのパーテイなどで、彼女が実に恥ずかしそうに振舞っているのを見て、会田ははたときずいたそうです。「彼女にとって日本人の捕虜の自分などは、人間ではなくて、犬と同じ存在なんだ。犬の前で裸を恥ずかしがる人間はいない」と。 この感覚は、差別などというものを越えていると思います。「差別」ならまだ相手を人間と考えているのですが、彼女の感覚はそこを完全に越えています。 わたしは、ジャングルの掟という言葉に、彼女と共通の感覚をみることができると思います。ただ、英国は植民地支配の経験があるために、表現の仕方が洗練されているのです。 わたしたちは、彼らの理論を考えるとき、この【感覚】の違いをきちんと認識しておかないと、間違うと思います。 |
まったく同感です。 長文の投稿ご苦労様です。 ありがたく読ませていただきました。 ポストモダン国家の志向。結構ですが 現実の世界情勢を見ると「早すぎた」 それでゆり戻しが来たのでしょうね。 |
流水様、はじめまして。 どの書き込みを目にしても、非常に読み易く且、共感、納得させて頂いております。老人党HPを開く時は、必ず拝読させて戴いております。 今回、会田雄次氏の【アーロン収容所】から引用されてましたが、「自己責任」という言葉を耳にする時、この著書を思い出します。(西欧ヒューマニズムの限界について他著書でも、多々記されていらっしゃいました。) 英軍が日本軍の捕虜数を国際法に抵触せず、合法的に減らすために、労働させ最低限の食事を与え、時々河に連れて行く。其処には蟹が沢山居るが危険な病原菌を持っていて、決して河の蟹を食べることの無い様、英軍は日本軍捕虜達に注意する。が、日頃より労働と最低限の食事で、空腹に悩まされていた捕虜達の中からは、我慢できず蟹を食べる者が出てくる。食べた捕虜達は病死する。それを何度も繰り返し、合法的に捕虜の数を減らしていく。危険だから決して蟹を食べるなと説明してあるにもかかわらず、解っていても空腹に耐えられない者は、「自己責任」に於いて蟹を口にするように、実は仕組まれている。しかし、捕虜には食事も与え、諸注意もきちんと為されているため、何等英軍には法的落ち度は無いことになる。人道的?捕虜の扱いがこれです。 会田氏は西欧史(中世ルネッサンス史)を専門とされていたと記憶してます。(間違っていたら申し訳ないのですが。)体験を基にしたその指摘は、目から鱗でした。善悪はともかく、そのような英軍のやり方を経験してから、ヒューマニズムとは何ぞや?と、問い直しをされていたように、記憶しています。そして、最近「自己責任」なる言葉が巷に溢れた時、とても厭な空気を感じました。個人的には自己責任は好きですが、他から言われることではないと思いました。ましてや権力側が、言うことではないと考えます。 英国のようなやり方も出来ない単なる力任せの米国は、別の存在に操られていると、知識の無い人が考えてもおかしくないと思いました。 |
拙文を読んでいただき、感謝いたします。 会田雄次氏については、大学時代恩師から何度も話を聞かされました。 あなたの指摘されている通り、英国の植民地支配は、ある意味で非常に洗練されたものでした。英国人の凄さは、植民地に多数の自国民を送り込み、インフラ整備など本国に決して負けないものを作り上げたところにあります。 戦前、日本が台湾、韓国、満州などで行ったインフラ整備など、多分に英国の植民地支配を参考にしています。 植民地支配の善悪の議論は別として、英国のきちんとした計画に基づいて着実に物事を実行するやり方は参考にしてしかるべきだと思います。 大学時代の恩師から聞いた話を紹介して終わりにします。 戦後、日本の大学が書籍不足に困って、英国と米国に書籍の寄付を嘆願しました。 米国は、すぐ大量の書籍を寄付してくれました。しかし、その本は玉石混交で、本の分類をきちんとできていませんでした。 一方、英国はどんな本がいるのかを尋ね、本が届くまでに時間がかかったが、非常に吟味された本を長期間にわたって贈ってきてくれたそうです。もちろん、分類もきちんとできていました。 どちらが良いのか、というのは難しいのですが、英国の計画的で着実できちんとした仕事振りが分かる逸話です。 現代はスピードの時代ですが、国家作りというのは、ゲームの中のバーチャルな現実とは違います。米国の急ぎすぎと忍耐力のなさは、世界の困り者ですね。 小泉政権下の日本も、急ぎすぎ、忍耐力のなさとだんだん米国の悪いところだけは似てきましたね。 |
世界観の話でいえば、ビクトリア朝時代の大英帝国ならいざ知らず、今のUKはEUとアメリカの中間だと言うのが私の印象なのですが。 ましてインド系・アイルランド系・アフリカ系住人(Englishという呼称よりBritishという呼称のほうを多く見かけます。)がいて、EUから働きに来ている方たちもいるのですから。 BBCの世界向け放送でも目に見えてインド系やアフリカ系の方々を使っているのがわかるでしょう。 そんな中でブレア政権の外向戦術があまり一般うけしていないのは、むしろ当たり前だと思います。 ですから、世界観の話はさておき、クーパーの案も、同じ詭弁でも、暴走気味のアメリカをEUとなんとか共存させる苦肉の策という風に読めば、むしろ納得がいきますね。 詭弁だと割り切りさえすれば、無秩序化しつつあるアメリカの暴力を「文明化した」ものにするお墨付きを他の「文明化した」国々があたえるというかたちにすれば、暴力をまるきり無秩序にしておくよりは良いでしょう。 理想的ではないにせよ、アメリカも孤立が進めばどんなことになるかわかりませんから、その意味では「現実的」かもしれません。 しかし、もう一度世界観に目を戻すと、東西の境界線がなくなって、かつ情報化の波に乗った北欧の台頭という異文化混在の感のあるEUとアメリカの温度差はこんなもので埋まるのでしょうか? |