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 ▼人質・その家族への非難について思うこと  歴史に学ぶ 04/4/22(木) 14:34
   ┣Re(1):人質・その家族への非難について思うこと  流水 04/4/22(木) 16:22
   ┃  ┣「世間」と「(市民?)社会」について  もんど 04/4/23(金) 0:02
   ┃  ┗Re(2):人質・その家族への非難について思うこと  歴史に学ぶ 04/4/24(土) 16:40
   ┣Re(1):人質・その家族への非難について思うこと  white young 04/4/22(木) 22:45
   ┗Re(1):人質・その家族への非難について思うこと  もんど 04/4/22(木) 23:54

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 ■題名 : 人質・その家族への非難について思うこと
 ■名前 : 歴史に学ぶ <yuko@gehennom.dip.jp>
 ■日付 : 04/4/22(木) 14:34
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   老人党のホームページがリニューアルされる前に,一度だけ書きこみをしたことがある者です。
一児の母で30歳代後半,歴史関係の仕事をしています。

イラクの人質事件について,私見を述べます。
このところの人質及びその家族に対するバッシングとも言える「自己責任」の嵐を疑問に思いながら見ています。
また,「自己責任」論は一部の人の意見だと思っていたのですが,決してそうではないことに少なからぬ衝撃を受けています。

1.義母(夫の母,60歳代後半,都会生まれの都市部在住で,特に支持政党はなさそう)が人質,特に高遠さんに対して批判的で「何を勘違いしているのか」というような表現で批判し,また,「救出に国費をどれだけつかったと思っているのか」と話していました。
救出前に高遠さんのホームページに非難・中傷が殺到して閉鎖されたことについても,「皆思うことは同じだね」というような調子でした。

2.実母(70歳代前半,過疎地生まれの都市部在住で,どちらかというと野党支持)にも意見をきいてみたら,人質の家族が政府に対して自衛隊の撤退を強く求めた態度について,「政府にしてみれば,誰も頼んだわけでなし,自分で好きで行ったのじゃないかといいたくなるよね」と言いました。人質やその家族に対する強い反感はないようですが,政府に強く詰め寄っての発言には多少の批判を持っているようです。
また,救出の費用が問題とされるのは,不景気のせいだと言いました。

1.の義母はアメリカに逆らえるわけでなし,自衛隊を派遣しないわけにはいくまい,という考えが中心にあるようです。
自衛隊をイラクに派遣しない,つまりアメリカの意向に逆らうという選択肢は日本にはないというのは,理想はともかくとして,現状の政治のリアリズムとしては間違っていないと思います。
あまり指摘されませんが,ドイツやフランスがアメリカに反対できるのは,食糧自給率の高さも重要な背景としてあると思います。アメリカとの貿易に依存している日本にドイツやフランスのような態度はとれないということを,私達は自覚すべきでしょう。
でも,アメリカのイラク戦争は,国際社会の中でも賛否が分かれています。
このような時,日本国民「は自衛隊のイラク派遣に賛成,撤退に反対」で一枚岩になる必要はないのです。
アメリカの意向に逆らえないのでお付き合いで自衛隊を派遣するのも大事なのと同様,アメリカとは反対の意見の国々ともうまくお付き合いするために,政府の方針とは反対の行動をとるNGOの活動もうまく利用するということが大事なのです。

国論を一つにまとめ,一枚岩で何かに対峙するような場面は,古い話ですが「元の支配化には入らない」という元寇の場合だと思います。この場合は「元が支配する時に備え,私が元の兵士の案内をつとめよう」という態度は非難されて然るべきと思います。
でも,今は,アメリカ一辺倒ではなく,日本国内にイラクの人々やEUの国々などにも通じる色んな意見のあることを示しておく方が,それこそ「国益」にかなうのです。
今回の救出ための費用は対アラブその他の国に向けての「宣伝費」,アメリカ一辺倒にならないための「保険料」とでも考えればよいのです。
このように考えられない政府や政治家に,私は疑問を感じています。
また,政府が駄目でも,せめて国民がそう考えないかと期待しているのですが,どうなのでしょうか。

1960年の日米安全保障条約改訂の時でも,自民党内には疑問を表明したり,反対を明らかにする有力政治家がいました。安保改定に神経を尖らせる中国(大陸の中華人民共和国)など,アメリカ以外の国々の様々な思惑もあり,与党が一致結束して安保改訂に賛成するよりも他国に安心感をもたらしたことと思います。
国際的にも,国内的にも賛否両論があり,また,両論が拮抗している場合は,政府の採る方針とは反対の意見もうまく利用するくらいの度量がなくては政治は運営できません。
このような意見が自民党内から,また,政治評論家や政治学者から出てこないことに,危機感をもっています。

この不景気の中,私達は国のお金の使い方に対してとても敏感になっています。
それは悪いことではないのですが,今回の何十億円(正確な額は知りませんが)に目をとらわれて,日本人の海外ボランティアや戦場での取材の減少がもたらす将来の損に鈍感になってはならないのです。
また,税金や年金保険料の無駄遣いには目をつむっているのに,今回の費用に対してだけ騒ぎ立てるのは公正ではないでしょう。

2.の実母の方は,人質の家族が感情的なることをどう捉えるかという問題だと思います。
家族が感情的になるのは仕方のないことでしょう。
家族が殺されるかもしれない時に,政治の筋論を求めても無理と言うものです。
ただ,政治というのは感情的な相手に同じ感情論で臨んではならないと思うのです。

「家族を人質にとられているつらいお気持はわかりますが,今ここで相手の要求をのむと,今後もこの手段で日本政府をコントロールしようという勢力が出てくるでしょう。それは結果的にあなた方のような人を再生産することにつながるのです。だから,相手の要求に従い自衛隊を撤退させるわけにはいかないのです」
このように首相なり政府高官が説明すればいいことです。
政府や与党政治家は家族本人達に向かってではなく,不特定の国民向けに(つまりメディア向けに)「自己責任」などと言い,人質や家族を非難する必要はないのです。
国民が色々な事情から感情的になって政府に物を言っても,政府や政治家は感情にながされて発言をしてはならないという,当たり前のことができないことにも驚いています。

ここまでお読みになって,私が自衛隊のイラク派遣を容認していると考えられる方がおられるかもしれません。
私は自衛隊のイラク派遣には反対です。また,撤退すべきと思っています。
与党や与党支持者,また自衛隊のイラク派遣に賛成する人たちの中から,「自己責任」論の問題点を指摘する声が聞こえてこないので,与党の立場ではこう考えるべきではないのかということを示したのです。
以上,念の為。

結論として,「自己責任」論は,長い目で見ての損得勘定が正しくできていない,その場のカタルシス目当ての浅はかな考えだと思います。

私は自民党の支持者でも共産党の支持者でもありません。
野党第一党の民主党を支持するというよりは,まず何よりも目標は政権交代の実現だと考えていますが,このところの人質・家族達への攻撃の論調を見ていると,とても憂鬱な気分がしてきます。
こんな状態では政権交代など,夢のまた夢だ…,とため息をついています。

政治とは関係なく私の周囲でも,3cm先の微々たる利益しか目に入らず,ほんの一ヵ月先,半年先の損に気付かず,人間関係をギスギスとさせては被害者意識を持ち,余裕がなくなり先を見とおした判断ができず…という悪循環に陥っている人が増えています。
せめて3cm先を30cm先にできないかと働きかけてみても,暖簾に腕おしという状態です。
政治が長期的な判断をするという機能を喪失しているのと同様に,各個人もそれぞれの生活の中で長期的な判断ができなくなっているのです。
1880年代,1930年代,終戦直後の不景気が騒擾事件や政治の混乱,そして最悪時は戦争を起こしたことは,歴史知識として知っているのですが,このところの不景気がこれほど人心を荒廃させるとは,本当に経験してみなければわからないことでした。
今の状況は,1930年代の不況が国民の中に政党政治への幻滅,満州事変など軍事への期待を膨らませ,結果として1945年の敗戦に至った流れに似ています。
不景気→戦争という単純な図式ではありませんが,敗戦のような破滅に向かっていることに政治家も国民も自覚がなく,とりあえずカタルシスを求めたり,目くらましとしての攻撃対象を探しているのが現状だと思います。
1930年代には五・一五事件や二・二六事件などテロが相次ぎました。
その当時の政治や国民はテロを容認し(五・一五事件の犯人達には減刑の嘆願署名が多数寄せられ,実際の刑は軽いものでした),最終的に勝ち目のない戦争に向かって行ったのです。
今回「テロに屈するな」という表現で政府や国民がどういう方向に向かっているのか,私達国民は落ち着いて見たり,考えたりしなければならないと思います。

ちなみに,私が義母・実母の意見をきいてどういう対応をしたのか,言わなければなりませんね。
義母とは実母よりも折り合いもよいし,色んな点で尊敬もしているのですが,やはり義理の仲です。義母の考えに驚いたこともあり,私の意見を述べて論争する勇気はなく,「はぁ」「そうですか」と相手の話を聞くにとどまりました。
実母とはあまり折り合いがよくなく,義母よりも会う回数も少ないくらいなのですが,私の意見はしっかり言い,相手を納得させることができました。
政治の問題についてフランクに話し合えるということが,本当は一番根っこのところで大事なのだとわかっていますが,実行するのは難しいです。

 ───────────────────────────────────────  ■題名 : Re(1):人質・その家族への非難について思うこと  ■名前 : 流水  ■日付 : 04/4/22(木) 16:22  -------------------------------------------------------------------------
   あなたの立論に感服いたしました。
「政治を語る」ということは、難しいものです。
多くの人は、「政治」は政治、自分の生活は生活、という無意識の区別をしています。
あなたは、自分の生活と「政治」と自分の知識とをきちんと見つめていらっしゃる。そこから、人質事件をきちんと考えておられる。
まず、その姿勢を高く評価いたします。

1、自己責任論の広がりについて→これは、あなたのご家族だけではないと思います。非常に分かりやすい議論だからです。その理由の一つに、【海外ボランテイア】という生き方が、まだ社会の草の根まで広がっていないということがあります。日本社会は、【理解できないもの】に対してあまり寛容な社会ではないのです。

しかし、自己責任論反対の報道がなされ、詳細が明らかになるにつれて、風向きは変わると思います。

2、米国からどのように【距離】をとるか、の問題については、【食糧安保】がきわめて重要です。EUなどは、かなりのスパーンで、食料自立計画を立て、実行してきました。これが、現在のフランスなどの姿勢の根底にあるという指摘は、近視眼的な反米ではなく、きわめて地に足のついた指摘だと思います。

3、国内世論が多様であることこそ重要である、という指摘も同感です。
今回のイラクの人質事件でも、イラクの人たちが【日本人】と【日本政府】を区別して考えるといっていましたが、今回の事件で教訓があるとするならば、ここに一番日本が汲み取らねばならない教訓があると思います。

あなたの立論には、ほとんど共感できるのですが、あなたの考察から漏れているものは、【世間様】という日本独特の感覚です。
残念ながら、人質の若い弟や妹さんには、この【感覚】が稀薄だったのです。事の理非にかかわらず、「世間様をお騒がせして」と姿勢がまず求められるのです。
ここのところを見間違えた、というより、それに対応できなかったのが、問題を大きくしたのだと思います。

同時に、「世論操作」というものは、この【世間】というわけの分からない空気のようなものを、味方につけることが一番重要であることが、明らかになったと思います。
日本には欧米流の【社会】があるかどうかは意見が分かれるのでしょうが、今回の人質事件で、はしなくも、やはり日本には【社会】ではなくて【世間】というものが厳然として生きているのだと思いました。

なぜ、自民党がいつまでも権力を保持することができるか、といえば、自民党議員はこの【世間】をつかむことがうまいというより仕方がありません。
野党側が今回の事件で教訓を得るとすれば、この【世間】をどうつかむか、という視点であろうと思います。

 ───────────────────────────────────────  ■題名 : 「世間」と「(市民?)社会」について  ■名前 : もんど  ■日付 : 04/4/23(金) 0:02  -------------------------------------------------------------------------
   五公五民などの幕府の政策を通して、個人の利益<公の利益という全体主義にも見られる理屈が日本人の精神に刷り込まれているということもあるのではないでしょうか? しばらく前、集団責任という言葉が横行していましたが、西洋のいわゆる個人主義はあまり浸透しなかったように思います。 ということは、政治家がこの「世間」という概念を利用している限りは、民主主義はありえないということになりますね。 基本的に人間の欲求なり、立場なりは違うものです。 違うからこそ交渉をして話を進めていかねばならない。 ところが、人口のほとんどが農民だったという感覚から、まだ抜けきっていないのではないでしょうか? 表面上は近代化して見えても、人口のほとんどがサラリーマン、人口のほとんどが軍人という社会しか成立の余地がなく、全く違う感覚を持った、全く考えの違う相手との交渉を通して成立するごちゃ混ぜの世界など、不得手なのではないでしょうか?

よく、若者から年配まで、「普通」とか、言う言葉を使うようです。 しかし、「では、『普通』を定義してください。」と質問すると、しどろもどろになるか、そんなこともわからないのかという態度に出る方も少なくはありません。 これでは、雑多な個人が様々な欲求を持って行き来する、自由資本主義的な構造に耐えられないのではないでしょうか? 前提を「人間、同じで当たり前。」と「人間、違って当たり前。」とする考え方には大きな開きがあると思います。 長い間、鎖国に甘んじてきた日本人が、いまさらグローバル経済の中に放り出されても、うまくいくかどうかは不明です。 だから、間違っているかもしれないが「みんな」で間違えるほうが安心だというのなら、有力な党がどこであれ、つまるところ関係ないのではないでしょうか?

とりあえず、ネットを使ってこの精神構造に変化が現れうるかどうか、みてみましょう。

 ───────────────────────────────────────  ■題名 : Re(2):人質・その家族への非難について思うこと  ■名前 : 歴史に学ぶ <yuko@gehennom.dip.jp>  ■日付 : 04/4/24(土) 16:40  -------------------------------------------------------------------------
   流水さま

お返事をありがとうございます。
かみ合った議論ができるということは,大変うれしいものです。
おかげで,このところの私の不安の原因が,
【世間】というわけの分からない空気のようなものと,わかりました。

身近な周囲の人に「自己責任」論にくみする人がいること,
その人に自分の意見を主張して説得できないこと,
ごく身近な人にしか自分の意見を述べられないこと,
もともとこの国で強かったそういう空気が,
人質事件をさかいに更に強まっているようですね。

それで絶望的な気分になっていまったのですね。
人の意見を読んだり聞いたりするのが好きなわりに
自分は投稿しようとは思わない私が,長文の投稿をしたのは,
ここで何らかの行動を起こさないとだめだという気持になったからです。

この【世間】というわけの分からない空気のようなものが,
今後どう推移するのか,戦前,1930年代のように,
ずるずると深みにはまって行かないか
注視していきたいと思います。

また,この10年間くらい,つまり自民党が与党に復帰して以来ですが,
どうして自民党の政治が続くのか,
自分にとって納得できる説明が探せなかったのですが,
【世間】をつかむことがうまいという指摘を受けて,
納得できました。

夫など周囲の親しい人から老人みたいといわれている私ですが,
やっぱり【世間】に対する視点の甘さなど,足りない部分があることが,
よくわかりました。
ありがとうございました。

 ───────────────────────────────────────  ■題名 : Re(1):人質・その家族への非難について思うこと  ■名前 : white young <khteshima@mh.point.ne.jp>  ■日付 : 04/4/22(木) 22:45  -------------------------------------------------------------------------
   大変立派なご意見で小生も賛成です。
小泉・福田等政府関係者の発言やプライバシーの侵害と思われる被害者家族へのマスコミのパッシングも本当にひどいと思いますが、それらの乗っかって一斉にワーット振れる国民のエモーショナルな性癖・民度の低さが改めて顕になったようです。昨今の雰囲気が戦前・戦中ににてきたように感じられて危ういものを覚えているところです。

 ───────────────────────────────────────  ■題名 : Re(1):人質・その家族への非難について思うこと  ■名前 : もんど  ■日付 : 04/4/22(木) 23:54  -------------------------------------------------------------------------
   食糧安保の理屈ですと、なぜ首相は靖国参拝などして、いまや最大の貿易相手国である中国の不興を買い、さらに専守防衛の禁を破って、米タカ派よりの外交をするのでしょう?

歴史に学ぶさんがご指摘のとおり、日本のような資源のない国が、資源のある国とまともに張り合えるわけがありません。 それゆえ、どこかの経済圏の下に入れてもらう必要があるわけです。 「米より中国を選べ」というのはいささか革新的に映るでしょうが、これもご指摘のように、せめてどちらの顔も立てる努力をするならば、そちらのほうが納得のいく外交ではあります。 脱マイクロソフト社製OS計画、ASEAN協力など、最近は中国もアジアの中心国としての自覚が出てきたようです。 以前、日本はアジアの中で唯一、西洋列強と張り合わねばなりませんでした。 しかし、今はインド・中国抜きにはアメリカもやっていけないはずです。 であれば、アメリカの中道派やASEANとの関係を親密化したほうが良いというのもひとつの見方だと思います。

なぜ、小泉政権はイスラエル・アメリカのタカ派、もしくは軍事勢力を選ぶのでしょう? 当然中国で反日報道がなされているのは知っています。 しかし、私はこれがアメリカのタカ派による情報戦術だとしても、驚きませんね(トヨタの件など貿易面に関しては中道派も関与しているかも知れませんが)。 少なくとも、今の反日は中国人の得にはならないはずですから。 もっとも、表立って中国と親密にしようとすれば、田中角栄のように権力の座から引き摺り下ろされるでしょう。 できれば水面下で、隠れた努力をしていてほしいものです。 しかし、靖国参拝などを行っているところを見ると、こうした期待は楽観的だと思わざるを得ません。 念のため付け加えますが、私は一概に靖国参拝が悪いと言っているのではありません。 あえて中国の国民感情に配慮し、まんまとある特定の勢力の思惑にはまらないようにする慎重さが必要だと思うのです。

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