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 ▼米国の野望  流水 04/4/28(水) 12:46
   ┗米国は、世界の基準ではなく、「例外」だということ  小心多助 04/4/28(水) 23:41
      ┗Re(1):米国は、世界の基準ではなく、「例外」だということ  Gokai Sezutomo 04/4/29(木) 12:30

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 ■題名 : 米国の野望
 ■名前 : 流水
 ■日付 : 04/4/28(水) 12:46
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   意外と知られていない米国の中東戦略の核心は、ネオコン派とイスラエルの関係にある。
1996年、イスラエルの研究機関から当時の首相ネタニエフに提出された”A Clean Break" という提言書がある。
作成者に、闇の帝王といわれるリチャード・パールや現在のブッシュ政権周辺の要職にある8人が名を連ねている。
【中東改造計画】とでもよぶべき提案である。

ここで提言されているのは、第一段階として、イラクのフセイン政権打倒とをハシミテ王制樹立をはかり、次にトルコとヨルダンの協力によってシリアを弱体化させ、イスラエルにとって安心できる戦略的環境を作る、というものである。

今回のイラク戦争の主導者ネオコン派の中東戦略は、ここに淵源があると思われる。
ネオコン派の戦略は、米国国内で何回となく姿を変えて出されて来たものの一環であり、今回の【大中東構想】は【民主化】の名の下に豊富な石油資源と中東市場の支配権を確立し、イラク戦争以降に拡充された軍事基地と軍事施設の巨大ネットワークの更なる強化を図ろうというものである。

では、【大中東構想】はどんなものか。
イラク戦争前、ブッシュ政権が開戦の大義名分に使った口実は、以下の3つである。
1.9・11以降に布告された【テロとの戦い】
2.【大量破壊兵器】の脅威
3.イラクが民主化すれば、周辺中東地域の模範になれる→【民主化ドミノ理論】

1.については、イラクとアルカイダを結びつける証拠はなかった。2.については、米英情報部による情報操作の疑いが浮上し、ないというのが定説になりつつある。
結局、3.の理由を強調する以外、米国の正当性を担保する大義名分はないということになっている。

この中東民主化構想は、ネオコン派により熱心に喧伝された。ブッシュ大統領自身も、開戦前から中東に「民主主義的価値観」を広げると広言していた。
03年5月には、「今後10年以内に米国と中東の間に自由貿易圏を創設する」と語っている。

民主主義をイスラム圏に定着させるというブッシュ政権の政策は、保守的リアリスト(現実主義者)から手厳しい反論を受けた。
代表的な反論を掲げておこう。

1.民主主義がその模範である西洋にとって敵対的な勢力を利することになる
=【民主主義の逆説理論】 ※イラクでいうならば、直接選挙を実施すれば、人口の6割を占めるシーア派が多数になる。シーア派の裏には、イランの影響力があり、これは米国にとって都合が悪い。→現に、南部地域の治安の悪化は、シーア派の直接選挙要求と占領当局の方針(米国の方針)との乖離が原因である。
2.アラブ社会で民主主義を促進するためには、米国が長年友人としてきたサウジ・エジプト・ヨルダンなどの非民主的指導者層に対して、米国の態度を転換するか、世界の誰の目にもはっきりしている【外交的偽善】を永久に続けるか、が前提条件になる。

要するに、米国は世界のあちこちで【独裁者の友人】たちと仲良くしながら、中東で民主化を唱える、という【二重人格】的外交をしているという批判である。

上記の批判は中東諸国ではなく、米国国内からのものである。ましてや中東諸国の批判は、厳しい。

ここ30年の米国の中東戦略の柱は、以下の3つである。
1.イスラエル防衛のための資金援助とある種の和平プロセスの追求
2.エジプト・ヨルダンの親米政権援助
3.湾岸産油国の支配者一族、とりわけサウジ王家との緊密な関係の発展

イラク侵攻は、これまで霞の中にあった米国のあり方をくっきりと浮き上がらせ、米国の正当性を疑わさせるだけの結果をもたらした。【結局は、米国はイラク国民の幸せより、石油の支配と軍事的プレゼンスの確保が重要である】という認識を明らかにしただけである。・・(シャール・シュブエニンガー説)

この種の国内における批判に答える形で、提起されている【大中東構想】は、もともとアラブ社会経済開発基金と国連開発計画の現地事務所で作成された報告書を都合のよいところだけ借用して、G8諸国の共通利益が「テロ」などによって脅かされると脅して、米国に協力を要請しているものである。

この構想に対して、アラブ諸国から厳しい批判の声が上がっている。
1、【大中東】の定義の問題→アラブ諸国+アフガン+イラン+パキスタン+トルコ+イスラエル  これらの地域の共通点は、イスラエルを除けば反米意識の強い地域だけである→米国の政治戦略上の優先事項に、西欧諸国を同調させる狙い。
2、アラブ諸国の独自性を無視した議論
3、他のC8諸国に、この報告書を検討する時間を与えていない
4、米国の狙いは、ドイツ・フランスなどをこの地域に巻き込むことを狙っている。それによりこれらの国々を自分と同じ土俵に引き込むことにより、アラブ諸国の希望を砕き、ドイツ・フランスと地域内部の変革勢力との連携により、新たな中東地域の秩序形成の動きを砕くことに狙いがある。
5、アラブ世界の主要な問題が無視されている。パレスチナ人の権利について一言の言及もない。

地図を広げるとすぐ理解できるが、大中東構想の範囲は、アレクサンダー大王の征服地域と重なる。米国のネオコン派は、本気でアレクサンダー帝国の再来を狙っているとも考えられる。

上記のように、米国国内からもアラブ諸国からも厳しい批判がある【大中東構想】だが、さらにイスラエルのヤシン師暗殺・ランテイシ師暗殺などの実行が行われ、ブッシュ大統領が支持する声明を出したことにより、この構想の目的自体の正当性に?がついてしまった。

米国の外交政策は、上記のように日本や諸外国よりはるかにイデオロギー的であり、原理主義的な要素が濃い。
小泉外交に代表される無定見な外交方針では、米国流イデオロギー外交に巻き込まれてしまう可能性が高い。
しかも、【大中東構想】は、きわめて破綻する可能性が高く、アラブ諸国からイラン・アフガン・パキスタン一帯の情況を液状化させ、それこそ文明の対立になりかねない。当然ながら、この地帯の液状化は、中央アジア・東南アジアに波及し、テロの危険性はさらに高まる。

今回のサミットは、その意味できわめて重要な意味を持っており、それぞれの国の理念が問われるものになる可能性が高い。

 ───────────────────────────────────────  ■題名 : 米国は、世界の基準ではなく、「例外」だということ  ■名前 : 小心多助  ■日付 : 04/4/28(水) 23:41  -------------------------------------------------------------------------
   2004/4/21 No231 「週刊メールジャーナル」の寄稿コラム転載します。
        http://www.mail-journal.com/
なお、川崎編集発行人様より転載許可を頂戴しております。

文中引用されている著作には、小生全く無知ですが、そこを除いても良質な示唆に富むコラムと存じます。特に対米追随の自覚症状の無い、自称良識人・常識人の方々に是非お目通しを願いたく、長文になり心苦しいのですがお許しください。

【米国覇権主義とマスメディア報道】
                            
         ドレーク大学ジャーナリズム学部準教授・布施宏二
                  (米国アイオワ州デモイン市)

 今回のイラクへの自衛隊派遣と人質問題に関し、我われ日本人が真剣に考え
なければならないのは、テロリストに屈服するか否かという次元の低い視点で
はない。倫理にかなった正道に従い、間違いを訂正することである。

 要するに、世界を舞台にした米国のテロリスト行為に加担しつつ、腹芸で危
機回避を試みる、日本の政治家の愚鈍さに批判を加え、国政を転換することに
ある。これは嫌米思想ではなく、正確な事実認識にもとづく外交政策を唱道す
るものである。

 米国に約13年間住み、アメリカ人を観察してきた結果、かつて見えなかっ
たものが今は鮮明に見える。多くの日本人にとって米国は憧れでもあり、私自
身も米国に留学しそのまま教壇に立つようになった。

 しかしながら、米国の常軌を逸した覇権主義に日本が追随する必要は全くな
い。日本人3人を誘拐した武装組織サラヤ・ムジャヒディンは、当初、逢沢一
郎外務副大臣のファルージャ訪問に際し、米軍の虐殺行為の現場を視察する要
求を出したが、米国のマスメディアに海外報道を事実上「委託」している以上、
彼らの要求の真意は日本人には見えにくいはずだ。

 例えば、ファルージャにおける、米軍による無差別殺戮の事実を正確に報道
しない、愛国精神に満ちた米国の主流メディアは、カタールを拠点にするアル
ジャジーラ(http://english.aljazeera.net/HomePage)と報道姿勢を異にす
る。

 更には、1991年の湾岸戦争の際に、米国軍主導の連合軍は、イラクの原
子力プラントならびに民間インフラストラクチャーを意図的に破壊し、また劣
化ウラン弾を存分に使用した。

 米国の引き起こした戦争とその後の経済制裁が、イラク国民にもたらした悲
痛な打撃は、Geoff Simons 著(1998)「The Scourging of Iraq: Sanctions,
Law and Natural Justice」(St. Martin's Press)に克明に記録されている。

 これらを左翼の宣伝と呼び、米国のレポートを鵜呑みにする者も少なくない
が、彼らには、国際政治構造と米国のPRプロパガンダ・マシーンの歴史が見
えていない。

 第2次世界大戦後、米国は国際連合をわが物のように牛耳り、世界各地で侵
略と戦争を繰り広げてきた。その上、さまざまな国際機関に抑圧をかけながら、
米国の意見が通らないときは単に無視してきた。

 米国にもリベラルな知的層は存在し、ブッシュ政権には辟易している。ノー
ム・チョムスキー博士などは、米国の外交政策を辛辣に批判し続ける。しかし
ながら、彼らの声は米国の主流メディアにはなかなか反映されない。

 米国のジャーナリズムを詳細に研究してみると、そのイデオロギーの狭さに
当惑する。「言論の自由」とは、要するに、具象化された理想の誇大宣伝に過
ぎず、米国のジャーナリズムの実態は、全体主義国家のジャーナリズムとさほ
ど相違はない。

 これは、「自由主義」を確証もなく盲目的に信ずる我われにとって、理解し
がたい逆説である。例えば、米国政府は、戦争遂行時における戦略に関する情
報、すなわち「都合の悪い」情報を、合衆国憲法修正箇条第一条の例外として、
マスメディアの報道を規制する。

 1991年の湾岸戦争時における、CNNによるテレビゲームもどきの報道
は、米国のマスメディアが、いかに米政府のプロパガンダの道具として使われ
てきたかを物語っている。

 米国民自体も、愛国主義と資本主義を子供の時から叩き込まれているため、
米国中心主義・大国主義の呪縛から逃れることは非常に難しい。

 「世界は、米国の富と自由を妬んでいるので、我々を嫌っているのだ」とい
うのが、私の聞いてきた一般の米国世論である。その程度は、恐らく日本のジ
ャーナリズムと国民の関係よりもたちが悪い。

 誰が一体国際テロリストなのかよく考えるべきだ。核兵器に関しイラク、北
朝鮮を牽制し続けてきたが、米国以外に、一体どの国家が国際連合憲章を無視
し、核兵器や放射性爆弾を戦争に使用してきたのか、
その病的(Pathological) な国民性をしっかりと認識すべきである。

 今回の対イラク戦争にしても、「大量破壊兵器」などというこじ付けのもと
に戦争をしかけ、まともに動かざる証拠など発見できてもいない。

 また、サダム・フセインは独裁者で、イラクに民主主義を与えなければなら
ないなどという、いつも通りの米国のプロパガンダを日本政府は卑屈な態度で
受け入れるが、一体、いくつの非民主主義的な独裁政府を軍事・財政援助し、
あるいはCIAを送り込み米国は支援してきたのか、更に、米国の自己中心的
な軍事覇権主義のもとに、何百万人という尊い命が世界のあらゆる地域で犠牲
にされてきたか、十分に把握すべきである。

 サダム・フセインが独裁者であったことは誰も否定しない。しかし、米国の
覇権主義の歴史を正しく見極め、それに従ってきた日本政府の無能さに自己批
判を加え、日本の犯した誤りを訂正することが、今回の問題の核心である。

 米国の隠された歴史に関しては、Howard Zinn著(2003)「A People's
History of the United States, 1492-Present」(Perennial)を参照されたい。

 国際平和への貢献という主張が日本では盛んである。世界第2位の経済大国
である日本は、世界の平和と秩序の維持に尽くさなければならない、というの
がもっぱらの意見である。

 しかしながら、(第1次)日清戦争、日露戦争、第1次世界大戦、満州事変、
また太平洋戦争など、そのような議論は、いつも日本の知識階級から出され、
日本国民はそれに踊らされてきた。その結果は、我われ一人ひとりのよく認識
するところである。

 日本帝国主義の歴史に秩序だった批判を加えず、挙句の果てに、日本国憲法
の無視と、法学者の保守的解釈に基づき、自衛隊の海外派遣に踏み切った日本
の未来は、太平洋の対岸に君臨する、Pathologicalな覇権主義を代表するブッ
シュ政権に委ねられている。

 米国は、世界の基準ではなく、「例外」だということに気づくとき、日本の
外交政策にも革新が起こるであろう。(2004・4・12)

【筆者紹介】

 布施宏二  :
 1987年、慶應義塾大学文学部文学科卒業(英米文学専攻)
 1994年、米国アイオワ州ドレーク大学ジャーナリズム・マスコミュニケ
ーション学部修士課程(Master of Arts)終了
 2000年、テキサス大学オースティン校ジャーナリズム学科博士課程  
(Ph.D.)終了
 1999〜2000年、ピッツバーグ州立大学コミュニケーション学科講師
(Lecturer)
 2000〜2003年、インディアナ州立大学コミュニケーション学科準教
授(Assistant Professor)
 2003〜現在、ドレーク大学ジャーナリズム・マスコミュニケーション学
部準教授(Assistant Professor)として、マスコミュニケーション、P・R、
ならびに日米異文化間コミュニケーションを中心に研究活動を続けている。
米国アイオワ州デモイン市在住。

 ───────────────────────────────────────  ■題名 : Re(1):米国は、世界の基準ではなく、「例外」だということ  ■名前 : Gokai Sezutomo  ■日付 : 04/4/29(木) 12:30  -------------------------------------------------------------------------
   小心多助殿:こんにちは
 
 私はただ唯、イスラム圏の人々が一致団結して、キリスト圏に対して精一杯の抵抗をしてほしいと望みます。なぜなら彼らは完全に洗脳されていないからです。「洗脳」などという怪しげな言葉を使わなくとも、「肝心な部分の隠蔽と辻つま合わせ」と言い換えてもけっこうです。
 イスラム圏までも支配されてしまったら、残る中国圏は案外、簡単かもしれません。そうなればキリスト圏の盟主の意の儘で、そうなれば世界中でもっと、あから様な洗脳を中心とした支配が始まる可能性も否定は出来ないでしょう。
 なにしろ、共産主義社会や北朝鮮の例を見る限り、
 『民衆は簡単に洗脳される』のですから。

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