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 ▼封印された時;一枚の写真に込められた原爆の記憶  流水 04/6/14(月) 23:05
   ┗戦争は悪  珠 04/6/15(火) 0:33
      ┗Re(1):戦争は悪  流水 04/6/15(火) 11:50

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 ■題名 : 封印された時;一枚の写真に込められた原爆の記憶
 ■名前 : 流水
 ■日付 : 04/6/14(月) 23:05
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   今日、bs−iで放映されたドキュメンタリー「原爆の夏 遠い日の少年」は、最近にない力作だった。
見終わったとき、不覚にも涙が止まらなかった。

主人公は「一枚の写真」である。否、正確には、その写真に写っている一人の少年の姿といったほうが良い。
一人の少年が、歯を食いしばってまっすぐ前を見てたっている。素足の足。ぼろぼろの服。背中には、すでに息絶えた小さな弟を背負っている。場所は、長崎の浦上川の川沿い。当時、原爆で亡くなった人を荼毘にしたのだが、あまりの多さに至る所で荼毘にされた。その少年は、死んだ幼い弟を背負って順番を待っていたのである。

わたしは何回も広島や長崎を訪ずれ、原爆の悲惨な写真を数多く見てきたが、この少年の写真ほど心を打たれたものはない。
12歳前後の少年が、背中に幼い弟の死体を背負って、それでも涙を見せずに、唇を血が出るくらいかみ締め、きっと前を見つめて直立不動の姿勢で、じっと荼毘の順番を待っている。
この少年の姿に、戦後の日本の復興を支えた人々の心が象徴されているように見えた。

写したのは、ジョー・オダネル。彼は、ホワイトハウスの専属カメラマンとして、戦後の歴代大統領の写真を撮影したカメラマンとして知られている。
しかし、その前、彼は海兵隊のカメラマンとして、戦後の日本を多くの写真で記録していた。
当時、従軍カメラマンは、軍の厳しい検閲を受けていた。GHQの占領政策に不利益になる写真を残さないためであろう。彼は、長崎県の佐世保、福岡、長崎などの戦後すぐの写真を撮影していたのだが、あまりの惨状に軍の命じた写真以外の写真を数多く撮った。

軍の検閲を何とか誤魔化して、その写真のネガを米国に持ち帰ったのだが、ホワイトハウスを退職するまで、その写真を現像しなかった。あまりの惨状を思い出すのが、怖かったのである。

現像した写真を見たときから、彼の人生は変わった。手作りの写真集をつくり、反核運動を行い、長崎で写真展も開いた。
彼は、この幼い弟を背負った少年を必死に探した。
81歳の彼は、この少年に会うためと自分の過去に会うため、日本を訪ずれる。佐世保・福岡では、彼が撮影した少年・少女の何人かと会うこともできた。

特にわたしに強く印象に残ったのは、大浦天主堂でのことである。
彼は、被爆後の大浦天主堂の写真を撮影していた。ほとんど崩れた大浦天主堂の前に、首だけ残った聖人の像が写っている写真である。
この聖人の像はどこにあるのか、と大浦天主堂のシスターに尋ねた彼は、「それは原爆資料館に展示されているはずです」と聞いたとき、「それは残念です。あの像は、ここに置くべきです。あの聖人の像の見ていた方向には、廃墟と化した長崎の街がありました。あの像は、ここに置くべきです」と語った。
この言葉に、わたしは戦後の日本人の歴史の向き合い方を叱られたように思えた。
戦後の日本人は、戦争の記憶を博物館の中に閉じ込めたのではないか。
彼は、そのことを厳しく指摘し、「どんな悲惨な歴史でも正面から向き合え、決して博物館に入れては駄目だ」と叱ったのではないか。

だが、彼の旅の最大の目的であった少年にはついに合えなかった。

テネシー州のナッシュビルの自宅に帰った彼は、日本での写真を整理して写真展を開いた。ホワイトハウスの専属カメラマンとしての彼は知っていても、それ以前の彼を知らなかった多くの人が会場を訪ずれた。
会場で一番人々を感動させたのは、やはり「あの少年の写真」だった。
写真に添えられた彼のコメントを読んで、もう一度写真を眺め、涙をぬぐう人が絶えなかった。
小さな子供を抱っこした若い母親のほほを伝う涙を見て、「ママ、泣いてるの。悲しいの」と問いかける無邪気な子供に一生懸命説明して、「こんな悲しいことを二度と起こしては駄目なのよ」と語りかける母親の姿に感動した。
「人間は捨てたものじゃない」と思った。

今の日本は、この人間の原点を忘れつつあると思う。
わずか12歳前後の少年が、死んだ幼い弟を背負う惨い現実に必死に耐えながら、それでも涙を見せず、きっと前を見据えて、直立不動で立っている姿に、戦後日本の出発点があった。

ジョー・オダネルは最後にこう語る。「どちらが良い、悪いではないんだ。こんな悲惨なことは、二度と起してはならないんだ」と。

 ───────────────────────────────────────  ■題名 : 戦争は悪  ■名前 : 珠  ■日付 : 04/6/15(火) 0:33  ■Web : http://www.geocities.jp/rojinto_goken/  -------------------------------------------------------------------------
   私も、あの写真は忘れられません。戦争はどんな理由をつけようと悪です。私達はそれを回避するために外交という知恵を絞るべきです。原爆・水爆を人類の上に落としてはならない。憲法九条は理想の憲法。それでいいと思います。絶対に他国に戦争を仕掛けない国家、そんなステキな憲法です。

 ───────────────────────────────────────  ■題名 : Re(1):戦争は悪  ■名前 : 流水  ■日付 : 04/6/15(火) 11:50  -------------------------------------------------------------------------
   大統領選が近づく米国では、「ブッシュか反ブッシュか」で、社会の分断が深まっている、と今日の朝日新聞の「米大統領選」の特集記事で報告されています。

この記事の中で、「テキサス州の地元紙オースチン・アメリカ・ステーツマンは、全米に3000ある郡で、共和・民主どちらの候補が60%以上の投票で地滑り的に勝利した郡に住む有権者の割合を調査したら、76年には26%、200年には45%に増加していた。同紙は、【かっては人種的な居住分離が米を分断していたが、今は政治的な居住分離が進行している】と分析、【政治的な居心地も良さを求める中、保守とリベラルの反目が深まっている】と結論を導き出している。」という米紙の記事も紹介している。

また、シカゴ大学教授カス・サンスタイン氏の談話として、「ブッシュ政権下で米社会の政治的な分断が進んでいるのは、この政権の本質に根ざしている。分断と敵対の中、相手に対して団結することで生じる保守・右派のエネルギーをよりどころにしている」という分析も紹介している。

米国で進行しているこの事態は、深刻です。この事態は、民主主義の根本にある【異なる意見の尊重】という精神が、失われつつあるということを示唆している。
この事態は、日本にもじわじわ浸透している。各種ネット掲示板がじょじょに会員制に移行せざるを得ないのは、限度を超えた【言葉のぶつけ合い】【誹謗中傷合戦】に嫌気をさした参加者が増加するからです。

そのため、自分と同じ考え方をする人同士との安心した関係に傾斜するのも、当然な成り行きです。
米国はその事態が、居住地域にまで及んでいるという報告です。

これが健全な社会かどうかというと、疑問符がつく。
この力関係が一方に傾くと、反対意見の持ち主は、弾圧するとか、国を出てゆけとかいう事態になる危険性があります。
こうなると、もはや「ファッシズム」です。
世界でもっとも力のある国が、ファッシズムに傾斜すると、それは世界に影響する。
まして、日本は米国追従の小泉政権である。その影響は即座に及ぶであろう。

これに対峙するには、政治的立場とかイデオロギーではなく、人間としての【普通の感覚】を大切にすることが重要だと思う。
息絶えた幼い弟を背負い、唇を血が出るまでかみ締めて直立不動の姿勢でたち続けている少年の写真から、何を読み取るかで、その人の人間としての感性が問われているのだと思う。

裸足の足、ぼろぼろの服から、戦後の日本の貧しさは容易に想像できる。直立不動の姿勢から、彼が受けた教育(男は泣くな、足を30度開いた直立不動の姿勢)が想像でき、少年が死んだ弟を背負っている姿から、彼の両親の不幸が想像できる。
弟を背負った紐の結び方から、誰か大人が手伝って背負わせたことが想像でき、可哀相と思っても人の世話までできない長崎の悲惨な状況が想像できます。

この種の感性は時代を超え、国境を越え、人間として普遍的である。物事を考えるとき、この普通の感性から出発することが、政治的主張の【真贋】を見分ける要諦だと思う。

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