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 ▼保護司制度に見る官僚支配体制(1)  流水 05/5/20(金) 15:11
   ┣Re(1):保護司制度に見る官僚支配体制(2)  流水 05/5/20(金) 15:13
   ┗Re(1):保護司制度に見る官僚支配体制(3)  流水 05/5/20(金) 15:14
      ┣Re(2):保護司制度に見る官僚支配体制(3)  ステディ ベア 05/5/20(金) 22:17
      ┃  ┗Re(3):保護司制度に見る官僚支配体制(3)  流水 05/5/21(土) 9:45
      ┗Re(2):保護司制度に見る官僚支配体制(3)  キタキツネ(元北の老兵) 05/5/21(土) 13:49
         ┗Re(3):保護司制度に見る官僚支配体制(3)  流水 05/5/21(土) 16:23

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 ■題名 : 保護司制度に見る官僚支配体制(1)
 ■名前 : 流水
 ■日付 : 05/5/20(金) 15:11
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   札幌の少女監禁事件で改めて問題点が浮き彫りになった保護観察について考えてみたい。

保護観察制度を簡単に歴史的に見ると、長谷川平蔵が作った石川島人足寄場にその淵源があるとされているが、制度として定着したのは大正時代である。
★大正12年1月に施行された旧少年法にある「保護処分の一つとして『少年保護司の観察に付す』制度(旧少年法六条)が、わが国最初の保護観察であるとされている。
★昭和11年5月の思想犯保護観察法が公布され、これが成人に対する保護観察の最初である。
★昭和24年5月、犯罪者予防更生法が公布、7月に施行。
★昭和25年5月、更生緊急保護法と保護司法が公布、施行。
★昭和29年4月、執行猶予者保護観察法が公布、7月に施行。成人執行猶予者に対する保護観察が制定されるに至った。
★昭和33年の売春防止法の一部改正及び婦人補導院法、婦人補導院仮退院者を保護観察対象者とするとともに、補導処分終了者を更生緊急保護の対象とする。 

こう見てくると、戦後の保護観察制度の中核が、少年の保護育成と婦女子の更正問題であることがよく分かる。
戦後多くの戦争孤児が巷にあふれ、彼らを如何にして保護し、健全な生育を図るかということと、売春禁止法の施行とともに多数の元赤線従事者の更正問題が社会的問題になった。彼女たちを如何にして社会へ復帰させるかという視点から、保護観察制度が活用されたのである。

この時代の保護観察制度の意味はきわめて大きく、いまだ貧しかった戦後社会の発展の一翼を担ってきたといえると思う。

ところが時代の変化とともに人々の生活様式も意識も大きく変化してきた。それにつれ、犯罪の形態も犯罪者の意識も大きく変化している。
特に、平成に入ってからは、普通人には了解不可能な動機による犯罪、移動手段の進歩・パソコンの普及などによる犯罪の広域化、高度情報化社会の到来による人々の欲望の肥大化など、従来の保護観察制度の柱となった社会的意味が根底から崩壊しつつあるのが現状である。

 ───────────────────────────────────────  ■題名 : Re(1):保護司制度に見る官僚支配体制(2)  ■名前 : 流水  ■日付 : 05/5/20(金) 15:13  -------------------------------------------------------------------------
   つまり、保護観察制度を支えてきた根本理念がもはや時代の趨勢についていけなくなっているというのが実情であろう。

さらに問題なのは、犯罪者更正の第一線の現場にたっている保護司の実情を見れば、如何に日本の更正政策そのものがお寒いものかがよく分かる。

保護司法に定められている保護司についてみてみよう。
(保護司の使命)
第1条 保護司は、社会奉仕の精神をもつて、犯罪をした者の改善及び更生を助けるとともに、犯罪の予防のため世論の啓発に努め、もつて地域社会の浄化をはかり、個人及び公共の福祉に寄与することを、その使命とする。
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文字にすると簡単であるが、これは結構大変なことが書かれている。
【社会奉仕の精神をもつて、犯罪をした者の改善及び更生を助けるとともに、犯罪の予防のため世論の啓発に努め、もつて地域社会の浄化をはかり】・・これを字句どおりに本気で実践するつもりなら、それこそ際限のない努力を必要とする。


(設置区域及び定数)
第2条 保護司は、法務大臣が都道府県の区域を分けて定める区域(以下「保護区」という。)に置くものとする。
2 保護司の定数は、全国を通じて、52,500人をこえないものとする。

(推薦及び委嘱)第3条 保護司は、左の各号に掲げるすべての条件を具備する者のうちから、法務大臣が、委嘱する。

1.人格及び行動について、社会的信望を有すること。
2.職務の遂行に必要な熱意及び時間的余裕を有すること。
3.生活が安定していること。
4.健康で活動力を有すること。
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要するに社会的信望が厚く、犯罪者の更正に熱意があり、時間的余裕があり、生活に不安のないもの、ということになる。
現在この条件に当てはまる人を探すとなると、結構大変である。戦前や高度成長期前なら、各地方に地方の名望家や有力者がおり、この条件に当てはまる人がかなりいたと推定できるが、現在のような移り変わりが激しい時代になると、この条件に当てはまる人を探すのも一苦労ということになる。

さらに保護司は、基本的にボランテイアであり、無給が原則である。

第11条 保護司には、給与を支給しない。2 保護司は、法務省令の定めるところにより、予算の範囲内において、その職務を行うために要する費用の全部又は一部の支給を受けることができる。
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では、その職務遂行のための費用に出る金はいくらくらいだろうか。見てみよう。

 ───────────────────────────────────────  ■題名 : Re(1):保護司制度に見る官僚支配体制(3)  ■名前 : 流水  ■日付 : 05/5/20(金) 15:14  -------------------------------------------------------------------------
   (補導費)
第2条  保護司が保護観察を担当したときは、担当事件一件につき一箇月五千六百二十円以内の費用を支給する。

(環境調整費)
第3条  保護司が保護観察所長から環境の調整又は保護観察に関する調査(以下「環境調整等」という。)を命ぜられ、その結果を報告したときは、一件につき千六百五十円以内の費用を支給する。ただし、環境調整等の場所が保護司の居住地から片道八キロメートル以上の場合には、これに要した旅行実費を支給する。

(特殊事務処理費)
第4条  保護司が保護観察所長から裁判所、検察庁等との連絡その他特殊の事務を処理するものとしてあらかじめ指名を受け、その事務を処理したときは、一日四千九百円以内の費用を支給する。ただし、保護司組織との連絡その他その組織活動に関する特殊の事務を処理した場合には、一箇月一万八千円以内の費用を支給する。

(その他の費用)
第5条  保護司が前3条に掲げる職務以外の職務を行う場合においても、保護観察所長が必要と認めこれを命じたときは、その職務を行うために要する実費を支給することができる。
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この費用をよく見て欲しい。これで保護観察対象の人間を本当に知ることができるだろうか。第三条の「環境調整費」など。一件1650円の費用で何ができるのでしょうか。まして、一月5,600円で保護観察担当の人間にどれだけ真剣に向き合えるのだろうか。

簡単にいうと、保護司になる人間の条件は必要以上に厳しく定めておきながら、それら厳選した人々を無給で働かせ、必要最小限度の費用しか出していないのである。
しかも、保護司にはかなりの研修を課し、それでいて何の権限も与えていない。実際上の権限を持っているのは、法務省の役人である【保護監察官】というわけである。
しかし、よく考えてみればすぐ分かることだが、「保護観察」というのは、裁判所の法的決定である。懲役5年という判決を受けた人間が、実際に刑務所に収監されなかったら大問題であると同様に、【保護観察】という決定を受けた人間が保護観察を受けていなかったら本当は大問題である。
今回の札幌の事件で明らかになったのは、実はこの「保護観察」という制度が、有名無実の存在になっていたという事実である。

上記の保護司の問題をよく考えると、この国の【官】のありようが見えてくる。
例えば、保護観察行政の実際上の権限を握る【保護監察官】は国家公務員であり、充分な報酬を受け取っている。彼らは、保護観察対象者と直接向き合うのではなく、現場の保護司の報告を受けて判断しているだけである。
ところが、現場の保護司は、無給で、必要経費も充分に出ない。権限もない。それでいて、何か問題があると、その責任を追及される。
裁判官は、裁判官で、【保護観察制度】が充分機能しているという前提で、判決を下す。刑務所は刑務所で人員オーバーの解消策として、仮釈放を連発する。
そのつけは、結果として保護司の負担となる、という構図である。

分かりやすくいうと、高い給料(裁判官、法務省の役人など)を取っている人間が、面倒な仕事を無給の人間に押し付け、何の権限も与えないでいて、都合が悪くなると責任を押し付けるという見事な【責任転嫁と無責任】の構図である。
この構図は何も保護観察制度に限ったものではないが、【無給】というありようのため、典型的なものとして考察しやすい。
普通の人はこのようなありように疑問を感じないわけがない。そのため、保護司のなり手が減少してきており、結局同じ人が続ける結果になる。これが、保護司の【高齢化】として現れている。
通常、70を超えた人に、現在の犯罪者を理解しろというのは無理がある。(例外はあるが)これが、ますます再犯率を高くするという悪循環を招く。

犯罪者を更正していくことは、社会にとって必要なことである。全ての犯罪者を死刑にしたり、一生刑務所に閉じ込めておくことはできない。とするなら、犯罪者の更正を促すことは、社会を維持していくために必要なコストである。
【犯罪者の更正】などという仕事は、人間そのものを扱うきわめて難しい仕事であり、片手間にできる仕事ではない。こういう仕事をする人には、それなりの処遇をするべきである。

 ───────────────────────────────────────  ■題名 : Re(2):保護司制度に見る官僚支配体制(3)  ■名前 : ステディ ベア  ■日付 : 05/5/20(金) 22:17  -------------------------------------------------------------------------
   ▼流水さん:

>上記の保護司の問題をよく考えると、この国の【官】のありようが見えてくる。
>分かりやすくいうと、高い給料(裁判官、法務省の役人など)を取っている人間が、面
>倒な仕事を無給の人間に押し付け、何の権限も与えないでいて、都合が悪くなると責任
>を押し付けるという見事な【責任転嫁と無責任】の構図である。
>この構図は何も保護観察制度に限ったものではないが、【無給】というありようのため
>、典型的なものとして考察しやすい。
>普通の人はこのようなありように疑問を感じないわけがない。そのため、保護司のなり
>手が減少してきており、結局同じ人が続ける結果になる。これが、保護司の【高齢化】
>として現れている。
>通常、70を超えた人に、現在の犯罪者を理解しろというのは無理がある。(例外はあ
>るが)これが、ますます再犯率を高くするという悪循環を招く。
>犯罪者を更正していくことは、社会にとって必要なことである。全ての犯罪者を死刑に
>したり、一生刑務所に閉じ込めておくことはできない。とするなら、犯罪者の更正を促
>すことは、社会を維持していくために必要なコストである。
>【犯罪者の更正】などという仕事は、人間そのものを扱うきわめて難しい仕事であり、
>片手間にできる仕事ではない。こういう仕事をする人には、それなりの処遇をするべき
>である。

全面的に同意します。
この犯人は、検察の論告求刑で「完全な変質者であり、全く更正の可能性がない、必ず再犯する」とまで断言されましたが、「初犯、被害者に1000万円の慰謝料を支払っている(父親が)」として、保護観察の最大期間5年を下しました。
保護観察制度そのものが完全に形骸化していながら、平然とかような判決を下す・・・
これだけではありませんが、今やあらゆるところでほころびや欠陥が露呈しています。

榊原 英資氏によれば、今、憲法をはじめとして取りあえず500件位の喫緊の要改正法律が有るそうです。制度疲労を来しています、小手先の訂正や追加条文ではどうにもこうにもならない状態に陥っています。

 ───────────────────────────────────────  ■題名 : Re(3):保護司制度に見る官僚支配体制(3)  ■名前 : 流水  ■日付 : 05/5/21(土) 9:45  -------------------------------------------------------------------------
   ▼ステディ ベアさん:
レスありがとうございます。
>全面的に同意します。
●この犯人は、検察の論告求刑で「完全な変質者であり、全く更正の可能性がない、必ず再犯する」とまで断言されましたが、「初犯、被害者に1000万円の慰謝料を支払っている(父親が)」として、保護観察の最大期間5年を下しました。
>保護観察制度そのものが完全に形骸化していながら、平然とかような判決を下す・・・
>これだけではありませんが、今やあらゆるところでほころびや欠陥が露呈しています。
>
>榊原 英資氏によれば、今、憲法をはじめとして取りあえず500件位の喫緊の要改正法律が有るそうです。制度疲労を来しています、小手先の訂正や追加条文ではどうにもこうにもならない状態に陥っています。
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その通りです。
今や、【改革】ではなくて、【革命】が必要な時ではないかと思います。
あらゆるところに蜘蛛の糸のように張り巡らされ、もつれにもつれた日本型官僚支配システムをどのように変えるか、というのが、われわれが直面している最大の問題点です。
きわめて大雑把にくくると、国民年金制度や税システムのように【複雑なシステムは、民衆支配の道具】という共通認識を国民一人一人が持つ必要があります。
さらに、【難しい言葉や専門用語の羅列】も「民衆支配の道具」であるという認識も必要です。

一言で言うと、【簡単なシステム】と【簡明で分かりやすい言葉】が、求められているのです。
さらに付け加えるならば、【エリート主義】とその裏腹な【差別主義】の克服、盲目的な【進歩主義】の見直しが、21世紀日本の最大の課題だと思います。

 ───────────────────────────────────────  ■題名 : Re(2):保護司制度に見る官僚支配体制(3)  ■名前 : キタキツネ(元北の老兵)  ■日付 : 05/5/21(土) 13:49  -------------------------------------------------------------------------
   流水さん

>上記の保護司の問題をよく考えると、この国の【官】のありようが見えてくる。
>例えば、保護観察行政の実際上の権限を握る【保護監察官】は国家公務員であり、充分な報酬を受け取っている。彼らは、保護観察対象者と直接向き合うのではなく、現場の保護司の報告を受けて判断しているだけである。

全く同感です。これと同じ事が他の分野でもたくさん見受けられます。よく官僚は机上論ばかりで実態を知らないなどと言いますが、この言い方は間違いで、知ろうとする前に、自分達の将来と縄張りを守ることしか頭にないのです。

この国は政治家とキャリアといわれる高級官僚に甘い汁を吸われる「パラサイト王国」です。自分達は選ばれし「女王蟻」で国民は「働き蟻」としか思っていないのでしょう。

 ───────────────────────────────────────  ■題名 : Re(3):保護司制度に見る官僚支配体制(3)  ■名前 : 流水  ■日付 : 05/5/21(土) 16:23  -------------------------------------------------------------------------
   ▼キタキツネ(元北の老兵)さん:

●全く同感です。これと同じ事が他の分野でもたくさん見受けられます。よく官僚は机上論ばかりで実態を知らないなどと言いますが、この言い方は間違いで、知ろうとする前に、自分達の将来と縄張りを守ることしか頭にないのです。
>
>この国は政治家とキャリアといわれる高級官僚に甘い汁を吸われる「パラサイト王国」です。自分達は選ばれし「女王蟻」で国民は「働き蟻」としか思っていないのでしょう。

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本当にそうですね。
【泣く子と地頭には勝てぬ】とは、別に遠い時代のことではないのです。
これをどう変えるか、結局権力構造を変える以外に方法はありません。
革命ができないのなら、政権交代を繰り返して、既得権益層を壊す以外に方法はありません。
まずは、【政権交代】以外に方法はないと思います。

老人党はそのための【運動体】だったはずです。今一度、【運動体】という原点に立ち返る必要がありますね。
何度も繰り返しますが、わたしは老人党は、組織でなくて【運動体】だと理解しています。

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