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 ▼この文章をどう読む!  流水 04/2/24(火) 9:16
   ┗Re(1):この文章をどう読む!  peace 04/2/24(火) 10:42
      ┗Re(2):この文章をどう読む!  流水 04/2/24(火) 11:00

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 ■題名 : この文章をどう読む!
 ■名前 : 流水
 ■日付 : 04/2/24(火) 9:16
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   ハワード・ジンという歴史家がいる。【民衆のアメリカ史】という著作を刊行し、米国内では100万部以上読まれている。また、昨年末その功績に対して「ル・モンド・ディプロマティーク友の賞」が贈られた。下の文章は、その受賞記念講演の一部である。
世界中で嫌米、反米の気分が広がる中で、米国という国の復元力と見るか、ただの少数派とみるかは、立場によって異なるが、現在の日本の言論状況と比べ合わせてみれば、なんらかの教訓を汲み取ることができると思う。

◆社会階級という概念を例に取りましょう。(教育、政治、メディアに見いだせる)支配的な文化に従えば、われわれの社会には階級など存在しません。利害関係はただひとつ、万人に共通の利益があるだけです。合衆国憲法の序文には、<< We, thepeople >>(われら人民)という表現があります。しらじらしい表現です。1787年、この憲法を起草した55名は、みな白人で、裕福で、奴隷を抱えた主人であったり、商売を営んでいたりしたのですから。彼らが心に決めていたのは、自分たちの階級の利益を擁護してくれる権威を据えることでした。

 金持ちや強者たちの要求に奉仕するこの統治機構は、今日にいたるまで、アメリカの歴史を貫いてきました。日常的に用いられる言葉づかいを聞いていると、万人(つまり富裕層、貧困層、中産階級)にとって共通の利益があるのではと思い込まされてしまいます。国民について語るときには、みなという言い方が使われます。大統領が満面の笑みを浮かべて、われわれの経済は「うまく行っている」と述べるとき、生き延びるのに汲々としている5000万人のことなどは念頭にありません。これはつまり、中産階級はまあまあというところで、国富の40%を所有する人口の1%が順風満帆だ、ということなのです。

 「国益」と呼ばれるベールの裏に隠されてきたのは、いつだろうと統治者階級の利益でした。政府首脳が自分たちの政策を正当化しようとして、「国益」なり「国の安全保障」なりを口にするのを聞くたびに、私は、自分自身の戦争体験、それにアメリカのあらゆる軍事介入の歴史を思い起こしては、疑念をかきたてられるのです。1950年、ハリー・トルーマンが朝鮮半島で、いわゆる「警察行動」を開始して、200万人が犠牲になったときも、リンドン・ジョンソンとリチャード・ニクソンがインドシナ半島で、それと同じくらい多数の死者を出した戦争をおこなったときも、1983年、ロナルド・レーガンがグラナダに侵攻したときも、1989年、現大統領の父親がパナマを攻撃し、その2年後にはイラクを攻撃したときも、1993年以後、今度はウィリアム・クリントンがイラクを空爆したときも、こうしたたぐいの正当化の言辞が聞かれました。

 そして今度は「新たなブッシュ」が、イラクの侵攻と空爆は「国益」にかなうと説いています。ばかげています。かくのごとき言葉がアメリカで容認されてしまうのも、ひとえに政府とメディアの数々の嘘がこの国全体を覆っているからにほかなりません。「大量破壊兵器」に関わる嘘。イラクとアル・カイダの結びつきに関する嘘。
今日ジョージ・W・ブッシュの支持率が低下しているのは、ごまかしにごまかしが重ねられてきたことに気がつき始めたアメリカ人が増えてきたからです。政府と大手メディアがいかに緊密な協力態勢をとっていても、です。こうした協力ぶりは、一般的に言って、民主国家よりも全体主義国家を思わせるものです。

 戦争は短期間で終結し、痛みもないという見通しは消し飛びました。数百名の米兵が死に、1000名以上、ひょっとしたら2000名にのぼるかもしれぬ米兵が傷を負いました。小さなケーブルテレビ局で(というのも、大きなテレビ局はこのたぐいの内容は放映しませんから)、女優シェールが、とあるワシントンの病院を最近訪問したときに、何を目にしたかを語っていました。腕や足を失った戦闘員たち、まだとても若いのに一生を台無しにされた青年たちです。そして彼女は、こんな戦争をどうしてやっているのか、とつぶやくのです。

 私たちは、メディアが黙して語らないことを、アメリカ市民に伝えようと試みています。たとえば、いかに短期間で終結したにせよ、流血の惨事だった軍事作戦で、1万人、あるいは3万人にのぼるとおぼしきイラクの民間人が命を落としたことを。また、インターネットや進歩派のラジオ局を通じて、イラク占領政策がどのようにおこなわれているか説明しようともしています。住民は乱暴な家宅捜索を受け、年齢を問わず無実の人びとが拘束され、住宅地に250キロ爆弾、500キロ爆弾が投下されているのです。

 『民衆のアメリカ史』の執筆を決意したとき、私が主題に選んだのは、将軍や政
指導者の目で見た戦争ではなく、GIとなった青年労働者たちの目、ある日突然、黒い縁取りのついた電報を受け取った彼らの両親、妻たちの目を通した国民の戦史でした。私が語りたいと思ったのは、「敵たち」の側の視点に立ったアメリカの戦史です。国を侵略されたメキシコ、1898年に領土を押さえられたキューバ、20世紀初頭に自国を征服しようとしたアメリカに抵抗し、6万もの人命が失われた忌まわしい戦争の惨禍を経験したフィリピンの人びとなどのことです。
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さて、皆さんは彼のこの文章をどう読みますか。もし、この視点が新鮮に感じられるようなら、現在の日本の言論状況が、この種の視点を欠いているのだと思います。

 ───────────────────────────────────────  ■題名 : Re(1):この文章をどう読む!  ■名前 : peace  ■日付 : 04/2/24(火) 10:42  -------------------------------------------------------------------------
   ▼流水さん:

この種の言論は今アメリカではイラク戦争の是非を問い、また、大統領選を控え盛んになっているようです。
世界的にベストセラーになったマイケル・ムーアの「アホでマヌケなアメリカ白人」がその代表例です。(強力におすすめの一冊です。)また、チョムスキーなどを読むと著者の多少偏った見方を考慮したとしてもアメリカと言う国の外交政策がいかなるものかがよくわかります。

冷戦が終わり、いまアメリカは大きく揺れています。
共産主義との戦いと言う大義名分があればこそベトナム戦争、朝鮮戦争など多くの犠牲者を出しても国民の不満は沈静化できたのですが、今回のイラク戦争に関しては以前の戦争に比べても遙かに犠牲者は少なく短期間にも関わらず国民の不満は高まっています。(冷戦の終結とともに情報・通信の劇的な高速化・拡散化もあるかもしれませんが。)

いずれにしてもこの種の言論は今アメリカの大きな潮流になっています。今や少数派ではありません。

しかしマイケル・ムーアのアカデミー賞授賞式のスピーチをにも見られるようにアメリカの民主主義の懐の深さには感嘆させられます。

 ───────────────────────────────────────  ■題名 : Re(2):この文章をどう読む!  ■名前 : 流水  ■日付 : 04/2/24(火) 11:00  -------------------------------------------------------------------------
   ▼peaceさん:
>冷戦が終わり、いまアメリカは大きく揺れています。
>共産主義との戦いと言う大義名分があればこそベトナム戦争、朝鮮戦争など多くの犠牲者を出しても国民の不満は沈静化できたのですが、今回のイラク戦争に関しては以前の戦争に比べても遙かに犠牲者は少なく短期間にも関わらず国民の不満は高まっています。(冷戦の終結とともに情報・通信の劇的な高速化・拡散化もあるかもしれませんが。)

米国内の世論も、如何に米国が世界で嫌われているかに、遅まきながら気が付いたのでしょう。
もう一つ、この著者の視点で特筆すべきは、米国内の貧困層の拡大という発想でしょう。日本では分かりにくいのですが、米国内でも【貧富の差】はいまや無視できない程度まで拡大している、と言う事実です。この問題は、遅かれ早かれ、いずれ米国そのものを根底から揺るがし始めると思います。
>
>いずれにしてもこの種の言論は今アメリカの大きな潮流になっています。今や少数派ではありません。

ブッシュの選挙委員長カール・ローブは、この状況を覆すために、ビン・ラデインの逮捕という劇的な状況を狙っているはずです。ビン・ラデイン逮捕を見合わせていたのは、アフガン攻撃に対してパキスタン軍部に協力させるための条件だったはずですが、もうそんなことにかまっていられないという状況でしょう。
それだけ、米国世論の風向きが変わってきたということだと思います。

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