過去ログ

                                Page    2663
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
   通常モードに戻る  ┃  INDEX  ┃  ≪前へ  │  次へ≫   
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ▼TATOO流行に見る社会の【タナトス】現象(1)  流水 05/4/7(木) 14:22
   ┣Re(1):TATOO流行に見る社会の【タナトス】現象(2)  流水 05/4/7(木) 14:31
   ┗Re(1):TATOO流行に見る社会の【タナトス】現象(3)  流水 05/4/7(木) 14:39
      ┣Re(2):TATOO流行に見る社会の【タナトス】現象(3)  海幸彦 05/4/7(木) 18:30
      ┃  ┗Re(3)変身と変性と!  流水 05/4/9(土) 21:37
      ┗Re(2):TATOO流行に見る社会の【タナトス】現象  ぎみゆら 05/4/9(土) 20:22
         ┗Re(3):TATOO流行に見る社会の【タナトス】現象  流水 05/4/9(土) 21:39
            ┗Re(4):TATOO流行に見る社会の【タナトス】現象  ぎみゆら 05/4/11(月) 18:19

 ───────────────────────────────────────
 ■題名 : TATOO流行に見る社会の【タナトス】現象(1)
 ■名前 : 流水
 ■日付 : 05/4/7(木) 14:22
 -------------------------------------------------------------------------
   現在、日本でもNBAやNBLなどを見る機会が増えた。特にNBAで目立つのは、TATOOを入れた選手が多いということである。黒人選手のほとんどが入れているといってよく、かえって入れていない選手が目立つくらいである。
これに刺激されたのかどうか、現在日本でもTATOOを入れる若者が増加しているという。
TATOOを日本語で訳すと、刺青。日本の刺青の歴史は古い。

刺青を歴史的に見てみる。文献的に見ると魏志倭人伝の中で、「鯨身・文身」と出ているのが最初。
ただ、考古学的に見ると、刺青を入れた文様の顔型の土器が全国で発見されているので、刺青の風習自体はそれ以前と考えられる。埋葬場所は、墓地との境界線で発見されることが多いので、どうやら黄泉の国と現世との【結界】を象徴していると考えられる。災いを追い払うためという呪術的な要素が大きかったのではと推測されている。
ところが、近畿地方一円からは、この刺青文様のものはほとんど発見されていない。これは、全国統一を目指した勢力が、刺青を文化的に遅れた習俗とみなした可能性が高いとされている。

それ以降、約1000年にわたって日本の歴史からは刺青は姿を消している。
復活をしたのは江戸時代。犯罪者に犯罪者であるという証拠を刻印するために腕に二本の線を彫った。これを【入れ墨】と呼ぶ。
そのため、江戸時代一般的に犯罪者のことを「入れ墨者」と呼称した。同時に、他の民衆に対しては入れ墨を禁止した。しかし、やくざや火消し人足など侠気を売り物にする人々の間では、腕に二本の線を入れる「入れ墨」と区別して、背中など全身に鮮やかな色調で墨を入れることが流行した。
これを「入れ墨」と区別して、「刺青」ないし「彫り物」と呼んだ。この彫り物を入れるのは、きわめて痛く、完成までに長い時間がかかった。そのため、「彫り物」のことを別名「我慢」とも呼んだのである。つまり、江戸時代には犯罪者が入れていた「入れ墨」と、やくざや火消し人足などが入れていた「彫り物」「入れ墨」の2種類があり、それは明確に区別されていた。
ところが、犯罪者にしろ、やくざにしろ、一般社会から見れば、普通の人間とは明らかに違う社会(異界)の住人と認識されていた。
このため、日本の庶民の間では、何となく刺青に対するマイナスイメージ(犯罪者・日陰者)が形成されたのである。
そして、この感覚は法律上昭和25年まで続いた刺青禁止の条文に象徴されるように、近年まで日本社会では一般的だった。

例えば、谷崎潤一郎の出世作「刺青」に見られるような耽美的感覚は、上記の「刺青」に対する社会的意識なしには考えられない。
また、「花と竜」で玉井金五郎が刺青をする場面で、「これを入れたならば一般社会には戻れないという覚悟(つまり侠客として一生を生きる)のために彫った」という類の台詞をあったが、これは「刺青」を彫るという行為が明らかに一般社会と違う世界(異界)に生きるということが意識されていたためである。

 ───────────────────────────────────────  ■題名 : Re(1):TATOO流行に見る社会の【タナトス】現象(2)  ■名前 : 流水  ■日付 : 05/4/7(木) 14:31  -------------------------------------------------------------------------
   ところが、近年、TATOOという言葉が一般的になり、かっての「刺青」という言葉が持っていた反社会的、日陰者などというマイナスイメージが薄れてきた。そのためかどうか分からないが、気楽にTATOOを入れる若者が増加しているそうである。10年ほど前、消せる刺青(シールを貼る)が流行していたが、今やそれでは満足できなくて本物を入れるようになったのであろう。

伝統的日本の刺青は、手彫りである。30〜40本の鍼を束ねて、その先に色をつけて彫る。図柄は、浮世絵画家歌川国芳の模写が主流とされる。歌川国芳は、三国志や水滸伝の図柄を好んで描き、立ち姿(縦の図柄)を得意とした。そのため、刺青の図柄に適したのであろう。
彫り物をされる側にとって、手彫りは、非常に辛い。特に筋彫り(輪郭を描く)が一番痛いとされている。彫り始めた当初は、痛さと発熱で歩くのもままならない状況になる人も多いそうである。そのため、途中で止める人も多いといわれる。「我慢」という別名も納得できる。
「彫師」は職人であり、うまい彫師と下手な彫師とでは、できあがりは月とスッポンだそうである。
TATOOは世界的なものであるが、日本の伝統的彫り物師の作品が世界的なTATOOコンクールで最優秀賞を得たのを見ても、日本の彫り物技術は世界でもトップクラスであることは間違いない。

しかし、近年は、「タトウーマシーン」なる機械が普及し、機械彫りが主流である。機械彫りの特徴は、彫が浅く、図柄が平面的である。しかし、手軽で早く仕上がり費用も安い。それに対して手彫りは、彫りが深く、色落ちが少ない。図柄は立体的で深みがある。しかし、完成までに時間がかかり、痛みを伴い、費用も高い。
そのため、機械彫りにお客が集中し、手彫り職人「彫師」は減少の一途を辿っている。しかし、近年は、手彫りの芸術性の高さが見直され、需要が高まっているそうである。

では、刺青にあこがれる人々の心理は何なのだろうか。
刺青をした人の多くが「人とは違い何かが欲しかった」と語っている。どうやら、自分のアイデンテイテイの確認のために彫っている、というのが多いらしい。
これは、江戸時代、「入れ墨」と違う「刺青」をすることにより、侠客としての自己を誇示したやくざや火消し人足たちの心情とあまり変わらない。

「刺青」は消えないというところに本質がある。一生消えない刻印を身体に刻み込むというのは、それだけの覚悟を周囲に示すということを意味する。
現代の若者たちはなぜそれほどの覚悟を必要とするのだろうか。

 ───────────────────────────────────────  ■題名 : Re(1):TATOO流行に見る社会の【タナトス】現象(3)  ■名前 : 流水  ■日付 : 05/4/7(木) 14:39  -------------------------------------------------------------------------
   フロイド心理学では、人間には「エロス」と「タナトス」という二つの心理があるとされる。
エロスは、「生へ向かう衝動」で、タナトスは「死へ向かう衝動」、または「破壊的本能」のことをさすとされている。。このタナトスとエロスは、表裏一体となって存在しており、エロスの裏側には必ずタナトスがあるそうだ。

いわゆる世紀末現象として騒がれた二十世紀末に起きた阪神淡路大震災、オウム真理教事件、酒鬼薔薇事件、少年のバスジャック事件、そして爆破テロ事件。
これらの現象を受けて、今の若い人たちの心の中に、鋭敏に社会(人間)のタナトスを感じているものがあるのではないか。自分たちが生きていくこれからの世界を漠然とではあるが、心のどこかで本当に信用していないのではないか。自分自身のアイデンテイテイが何かしらふわふわと浮遊しているような不安感を否定できないのではないか。
二十一世紀は、人類がこぞってタナトスの方へ、つまり自滅する方向で一体化しているように感じるているのではないか、と思える。
犯罪の増加も既成権威の崩壊現象も少子化現象も児童虐待もNEETの増加も、その根っこのところでは、同じではないか。社会の「タナトス」現象のあらわれではないか。TATOOの流行は、この「タナトス」現象の一つの表れではないか、という思いが拭いきれない。

刺青という言葉をTATOOと言い換えても、自分の肌を傷つけることには違いはない。自傷行為であるということに違いはない。
自傷行為は、「タナトス」である。【死へ向かう衝動】である。
TATOOをする人が増加している社会とは、ファッション・流行という側面も無視できないが、「自傷行為」でしか、自分のアイデンテイテイを確認できない人が増加している社会という側面が大きいと考えられる。
それが証拠に日本は年間自殺者が3万人を超している。自殺者が3万にということは、これに倍する(数倍かも知れない)自殺予備軍が存在するということである。

TATOOの流行も、心理的にはこの流れの中にあると考えたほうがよいと思う。
どうやらわたしたちの社会は、ゆっくり「タナトス」へ向かって走り出したのではないか、という予感がする。
政治は、こういう社会の基底部で起きている漠然とした意識の変化(不安ともいう)を的確にとらえた政策を打ち出さないと、日本の将来は危ういのではないかと思う。

 ───────────────────────────────────────  ■題名 : Re(2):TATOO流行に見る社会の【タナトス】現象(3)  ■名前 : 海幸彦  ■日付 : 05/4/7(木) 18:30  -------------------------------------------------------------------------
   ▼流水さん:

私は、端的に言って、「正義が滅びた時野蛮が来る」と思っています。簡単に言えば「しらけ」ですね。
中世暗黒を想起します。キリスト教が変節して、(しらけた結果)、ヨーロッパは1000年の眠りに付きました。今私たちは共産主義・社会主義がすっかり変節したことを知り、第二の眠りを迎えようとしているかもしれません。だとすれば、個人は何をしてもダメ、せいぜい刹那に生きるだけです。
今日、ワレサの談話が新聞に載っていました。
「パウロは共産主義打倒に多大なる貢献をした」
これが、かつて私たちが拍手を送った連帯・ワレサの現実です。ワレサには、これから先、世界がどう向かうべきかのプランがあるのでしょうか。せめてワレサには、「共産主義」を打倒した西側が、いま向かっている世界に、なにかの警鐘をならすことも忘れてほしくなかった。

あと、自殺の件。自殺者は3万人います。それが毎年です。だれでも一度や二度は自殺を考えるのではないでしょうか。だとすれば、流水さんの推測は「甘すぎる」。数倍数十倍ではなくて、3万人に対しては、一億人がその予備軍であると見るべきではないでしょうか。

 ───────────────────────────────────────  ■題名 : Re(3)変身と変性と!  ■名前 : 流水  ■日付 : 05/4/9(土) 21:37  -------------------------------------------------------------------------
   海幸彦さん、きみゆらさん

小学校時代の夏休み、学校の図書館に通いつめ、図書館の本を全部読みつくすつもりで読書したことがあります。そのとき、ねずみの集団自殺とでもいうような奇妙な行動を書いた本を読んで、生き物の不思議な生態に驚いた記憶があります。
現在の人間のありようがどうもこの【ねずみの集団自殺】と重なってみえるのです。
【滅びに向かって疾走する】終末論的感覚が取り付いて離れません。

TATOOは、タヒチ語からきたものだそうです。手彫りで刺青を入れる場合、鍼のはねる音からきたとされています。
わたしは子供たちによく次のようなことをいっていました。「文明が進めば進むほど、人間は原始に帰る傾向がある。その端的なものが、ピアスとか首輪、腕輪、化粧などだ」

ここでわたしが言いたかったのは、人間は弱いもので、自分たちが作り出した文明から疎外され始め、その自己回復のために【変性】せざるを得なくなるというメカニズムでした。
宗教に入れ込む人もそうでしょうし、奇抜なファッションで装う人もそうでしょうし、政治運動に入れあげる人もそうでしょうし、ゲームに入れあげる人間もそうでしょう。TATOOに走る若者たちもやはり【変性】したいのだと思います。

わたしはあへて【変身】ではなくて、【変性】と書きました。
その意味は、日本で安直に使われる【変身】などは、変身でもなんでもなくて、ただの錯覚である場合が多いからです。
【変性】の原義は、文字通り性が変わるということです。男が女性になったり、女性が男性になったりすることです。それならただのゲイかニューハーフかという嘲りが聞こえそうですが、そうではなくて【変性】というのは、根底から世間の秩序と衝突する感性のことです。
わたしのいう【滅びの予感】というのは、このような変身ではなくて、【変性】願望の人が増えつつあるということは、それだけわたしたちの社会が多くの人々をはじき出しつつあるということの証左でもあります。

これはわたしの予感にすぎませんが、このような【変性】志向の強い人からのみ、新しい時代の動きは現れるのだと思います。
【変性】とは「へんじょう」と読んでください。

 ───────────────────────────────────────  ■題名 : Re(2):TATOO流行に見る社会の【タナトス】現象  ■名前 : ぎみゆら <gimiyura@fox.dti2.ne.jp>  ■日付 : 05/4/9(土) 20:22  -------------------------------------------------------------------------
   流水さん、こんにちは。


> 犯罪の増加も既成権威の崩壊現象も少子化現象も児童虐待も
> NEETの増加も、その根っこのところでは、同じではないか。
> 社会の「タナトス」現象のあらわれではないか。TATOOの
> 流行は、この「タナトス」現象の一つの表れではないか、という
> 思いが拭いきれない。

全般的なつかまえ方として、おおむね同意します。というよりも、
共感します、といったほうが近いです。感覚的に、ごく大づかみに
いうと、多くの若い人たちが、いまの世の中全般に、絶望に近い
くらい、深い不信感を持っている。

私たちや、もっと上の年代の人たちのイメージでは、絶望、不信と
いっても、そこにはなにがしか怒りや悲しみといった感情の裏打ちが
あるはずですが、彼らの不信は、もっとずっとさめていて、怒りも
悲しみもない。希望もない。不信以外の何ものでもない、不信。

自分を振り返っても、十代後半から二十歳前後のころ、世の中とか、
社会とか、それが何なのか、本当にはひとつもわかっていなかった。
わかったような気になっていただけ。それは、いまの若い子たちも、
たぶん大差ないでしょう。

だから、世の中に対する深い不信感といっても、いまの日本社会を
彼らなりに値踏みしたうえでのことというよりも、もっと直感的、
皮膚感覚的なもので、簡単にいえば、すべての大人に対する例外の
ない不信感なんだろうと思います。

大したヤツだ。なかなか骨がある。世の中にはこんな大人もいるんだ
という驚きや畏怖のようなものを、一度も感じたことがない。そんな
毎日が15年も18年も続き、じゃぁとりあえず、タトゥーの一つでも
入れてみようか。

親も、周りの大人たちも、学校の先生も、テレビや雑誌で見かける
誰も彼も、みいんな、私がときどきいう「小役人」にしか見えないん
じゃないでしょうか、彼らには。そして、その彼らの目は、たぶん
おおむね的確なんだろうとも思います。

ただ、ひとつ感じるのは、彼らのなかに、「一人で動く」子たちが
けっこういるのではないかということ。一人で引きこもって、一人で
プチ家出して、一人でタトゥーを入れる。だとしたらその子たちは、
その分だけ、「小役人」たちよりもはるかにマシ、とも思います。

とりとめがありませんが、案外、希望の芽はそっちのほうにあるの
かもしれない。というのが、近ごろの私の、率直な気持ちです。

 ───────────────────────────────────────  ■題名 : Re(3):TATOO流行に見る社会の【タナトス】現象  ■名前 : 流水  ■日付 : 05/4/9(土) 21:39  -------------------------------------------------------------------------
   きみゆらさん、
海さんへのレスにあわせてレスを書いていますのでご了承ください。まとめレスになって申し訳ありません。

 ───────────────────────────────────────  ■題名 : Re(4):TATOO流行に見る社会の【タナトス】現象  ■名前 : ぎみゆら <gimiyura@fox.dti2.ne.jp>  ■日付 : 05/4/11(月) 18:19  -------------------------------------------------------------------------
   流水さん


【48285】Re(3)変身と変性と!  拝読しました。

これは世の中のことに限らないのですが、中途半端な失望や絶望が
いちばんタチが悪い。絶望するなら、とことん絶望しなければ意味が
ない。そんなことが、けっこういろんな世界で、いろんな観点から、
繰り返しいわれてきたように思います。

何にせよ、「手慣れた人たち」とは、あまりエネルギーをかけて
つきあわないほうがいいのだろうと思っています。ただ、ふつうの
暮らしをしている以上、「まるっきり」というわけには、なかなか
いきませんが。(笑)

いつも示唆深い書き込みを、どうもありがとうございます。
どうか、お元気で。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━    通常モードに戻る  ┃  INDEX  ┃  ≪前へ  │  次へ≫    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━                                 Page 2663